【実施報告】

 

≪被災地でのEVカー活用の見学ツアー:石巻地区≫

 

日時:平成27年2月17日(火)8:00-17:30

訪問先:網地島(石巻)、小渕浜(牡鹿半島)、蒲鉾本舗「高政」(女川)、渡波第二・万石浦(復興住宅)

参加人数:40名

 

災害に強いコミュニティを目指した被災地での住民の足確保に向けたEV導入事例、民宿、蒲鉾工場での充電システムとEV活用事例を見学しました。

実際に現地に足を運び被災地の現状を確認し、EVが活用され地域のコミュニティに役立っている様子を見学すると共に、次世代自動車の開発における今後の課題をより明確にすることができました。具体的には、土地や利用者の特性に合わせた移動手段の開発と運用、電気自動車の走行距離の改善や給電場所の確保、そして地元企業の活性化による雇用の促進の実例です。また、それらの課題の克服の為の取り組みについても話し合い、東北地方の産学官金のよりいっそうの連携の意思を新たにしました。

◆石巻沿岸部(鮎川港)の様子

バスで牡鹿半島に向かいました。沿岸部はまだ震災の爪痕が残り、復興が十分に進んでいないようでした。津波で多くの建物が流され、未だ再建が進んでいません。

◆網地島(石巻)

NPO法人ジョイフル網地島の高橋様からお話を伺いました。平成11年に島の小学校を改装して作られた網小医院では、EVを利用しています。宮城県とトヨタ自動車(株)が協力し同社が開発した小型EV車で、実証実験を行っています(電気自動車「eQ」をベースに実験用車両として政策されたもの)。

 

 

 

 

・島の復興の為にNPO法人を立ち上げ、様々な活動を行っている(平成26年6月に正式にNPO法人に  

 認定)。

・離島ではガソリン代が高いので、燃料費の面で電気自動車はリーズナブル。

・電気自動車は通常の自動車に比べ静かなので、特に耳の不自由な高齢者は接近に気付かず危険な事があ  

 る。

・三菱のEVトラックもシェアされているが島の道路の幅の狭さに対して車体が大きいので活躍場所が限  

 られている。

・網小医院のEVは利用者の送迎や職員の通勤に利用されているが、細い道は通れないため大通り行き来

 がメインで往診等には不便である。

 

◆網地島の道路の様子


実際に島内の道を歩いて道路の様子を検証しました。

島の道路は非常に狭く、急勾配の坂が連続していました。大きな自動車では入れない場所が多い為、より小回りの利く移動手段が望まれるのではないか、徒歩での移動が難しい高齢者にも簡単に利用できる移動手段が必要なのではないか等の、具体的な対策を考える材料となりました。


また、ジョイフル網地島代表の小野喜代男様にお会いしてお話を伺い、高齢化と過疎化の進む島の状況について確認することができました。当日は工事の為にEVトラックが活用されており、役立っているという声も伺えました。


自動車だけでなく、その地域の特性と住民層に合わせた、より多様で実用的な移動システムが必要なのではないかと話し合いました。

◆網小医院

網地島唯一の病院網小医院にて

トヨタ自動車から提供を受けている電気自動車の見学をしました。トヨタeQをベースにした車体では往診など島の路地を走行するには大きすぎるために主に港から食材などを運搬するのに使用しているとのことでした。

◆小渕浜(牡鹿半島)

EV(日産リーフ)を利用している割烹民宿「めぐろ」を訪れ、お話を伺いました。


・EVは従業員の通勤や利用客の送迎に用いられてい

 る。

・EVの走行可能距離は公称よりも短く、常に残量に

 気を配らなくてはならないのでその点が不便。特に

 冬場は走行距離が短くなる。

・民宿ではソーラーパネルなども利用しているが充電 

 には家庭電源だと8時間かかり、ガソリンに比べ補給

                         が難しい。


EVの走行距離と補給効率の改善が課題となっている事を確認しました。

また、通勤や子育てなど、生活する上での地元の方の実感を具体的なエピソードを交えてお聞きし、雇用や教育面を含めた地域社会の課題について総合的に確認することができました。

◆蒲鉾本舗「高政」(女川)

蒲鉾本舗「高政」万石の里店でEVステーションと工場のオール電化についてお話を伺い充電現場を見学しました。


・充電が可能なトヨタプリウスPHVを営業車として使用してい

 る。

・営業車は遠くに行く事も多く、EVだけだと不便なので電気&ガ

 ソリンのプリウスを使用している。

・お店の駐車場には約40分間で急速充電が可能な、AC200VのE

 Vステーションが設置されている。

・急速充電システムは営業車だけでなくお店を訪れる顧客も利用  

 し、近隣の地域経済の活性化に役立っている。

・工場をオール電化にしたので環境面や業務効率が改善され成果を

 上げている。ソーラーパネルも導入済。

◆渡波第二仮設住宅集会所(石巻)

仮設住宅集会所にて、一般社団法人日本カーシェアリング協会代表の吉澤様と万石浦仮設住宅自治会長の増田様のお話を伺いました。

 

・カーシェアリングが仮設住宅に住むお年寄りの生活の助けとなり、また助ける側にも遣り甲斐を生んで

 いる。

・更にその中で互いのコミュニケーションが生まれ、仮設住宅の住民のコミュニティの活性化に役立って

 いる。

・仮設住宅で利用されているEVは三菱自動車のi-MiEV。

・i-MiEVに「MiEV powerBOX」という給電装置を使うことで、フル充電時に約1日分の家庭電力を取り

 出すことが可能。非常用の電源としても役立つ。

・市内各地の防災訓練で、工夫を凝らした給電デモンストレーションを行っている。日常の中で、給電も

 可能なEVカーが災害時に役立つという認識を高めている。

◆万石浦仮設住宅(石巻)

仮設住宅で使用しているEV及びその充電の様子について見学し、カーシェアリングが仮設住宅のコミュニティに役立っている様子を拝見しました。

震災から時間が経った現在の仮設住宅の様子についても伺い、以前は外部からの支援がメインだった状況が地元住民の助け合いで成り立っていく変化の中で、カーシェアリングを事業として継続していくプランについてお聞きしました。

*お世話になりました石巻の皆様に深く御礼申し上げます*